「漢方薬」というと「長く飲まないと効果がない」「高い」というご意見をよく伺います。
しかし、うちにおみえの方たちの多くは「効果がすぐ分かる!」「漢方って結果的に安いかも!」とおっしゃいます。
この差は何でしょうか?
まず、当店では基本的には煎じ薬ではなく「OTC薬」とよばれるすでに出来上がった処方を使います。
これは本来は「根→葉→動物」など、処方によって煎じる順番があり、煎じたり薬研で末にしたりするまでが処方する者の仕事だと思っているからです。
例えば有名店のシェフからお料理の材料を寸分たがわずもらったとして、同じものが作れるでしょうか?
私には作る自信も腕もありません。
なので、「この処方はこのメーカー」と思うメーカーから最善と思われる処方を入荷し、最善と思う服用方法のご紹介をしております。
漢方薬の歴史は古く、古典では「易(えき)」などの呪術めいた文面も見られますが、それは特殊な事ではなく、今でも何かとびきりの嬉しい事・絶望的な事があれば、空を見上げたり祈りたくなる気持ちは、万人・万国共通だと思います。
オリンピックなどの大舞台では、家族の写真などをお守り代わりに持ち、勝利の瞬間は空を見上げる。
宗教という意味だけではなく、心のよりどころであり、積み重ねた努力や想いなどが自然と昇華される瞬間なのではないでしょうか。
古来、病というものは突然降りかかる災いでした。
伝染病などは目に見えず、衛生対策の知識がない頃には、世界中でなにより恐れられる存在でした。
現在でも、「ウイルス性の疾患」という事は知識としてあっても、目に見えないことには変わりありません。
漢方薬ができ、「古典」と呼ばれる書物にまとめられた古の昔、権力者の一番の恐怖は「病気・老い・死」でした。
激しい権力争いの末、やっと手に入れた権力を病気や老い・死によって失わなければいけないという事は、彼らにとって一番の不条理に思えたことでしょう。
そんな権力者に向かって「この薬は半年は飲まないと効果は分かりません」などと言えるでしょうか?
漢方薬の発祥の地、古代中国で権力者に仕える人々は「宦官(かんがん)」といい、去勢をした男子であり、彼らは人ではなくしゃべる動物として扱われ、所有者が生死を自由にしてよかったのです。
宮廷医師も例外ではありません。
治せなければ、治療法を間違えてしまえば、即座に拷問にかけられ、処刑されることは珍しくなかったそうです。
ですので、当時の医師たちは文字通り必死に生薬を、ある時は煮詰め、ある時は粉にして「漢方薬」という生薬の組み合わせを作ってきました。
そして、面白い事に古典には「失敗例」が数多く載っています。
どの状態の時、どんな治療をすると「どう間違え、どんな症状が出るか。その時の対処法はどうするか。」という事に、かなりのページを費やしています。
どんなにいいお薬も、どんなに素晴らしい治療法も、使い方を知らなければ無用の長物であり、むしろ毒となって病を助長させることにもなりかねないからです。
素晴らしい治療法を考えた医師ほど、間違えて使われ、その治療法が失われることを恐れたのではないでしょうか?
漢方薬は、有史以前からあり、数千年に渡り臨床データーの積み上げられた学問です。
数千年かけてまとめあげられた臨床例の山を勉強していくことは至難の事です。
ましてやこの数千年の間に、漢方薬を服用する人間の環境は大きく変わっています。
しかし、バッハやモーツァルトなどのクラシック音楽が生演奏でこそ心を震わせるように、生薬だからこそ起きる身体の反応があるのではないでしょうか?
まだまだ名人の域には程遠い処方家ですが、古典を大切に、科学の知識を取り入れ、時代の流れや統計学を軽視せず、みなさまのお役に立てるよう先人たちの知恵を勉強しております。
漢方薬にご興味のおありの方は、ぜひお気軽にご来店くださいませ。
カウンセリングのみも歓迎でございます。